v.o.c - column vol.10

Vapor On Curry (v.o.c) - column vol.10

 

Vapor On Curry (v.o.c) 不定期コラム「長野ぶらぶら節」第十回

 

〜 ビートメイクを考える 〜


以前雑誌「DOLL」のことを書いたが、今回は「FRONT」である。なぜかというとビートメイクに煮詰まっているからだが、これがまた毎度のことであるため、この際ヒップホップについて何か書き留めておくのが精神的にもいいのではないかと思った。壁にぶち当たったときには基本に帰ってみるのがいいと思って、オールドスクール期に何が起きていたのかを確認するために「FRONT」を読み返しているというわけだ。

 

僕はもともとビートメイク=作曲というものだと思っていたが、最近サンプリングでビートを作っていて、サンプルを使うか使わないかでビートメイクに対するアプローチに差があることに気が付いた。最終的にはビートの仕上がりに影響することなのだが、自分で感じるところではサンプリングビートの方が出来がいいし、楽曲としてもブレイクスルーしている感じだ。理由はサンプリング元のサウンドがすでに完成されている分下駄を履かせてもらっているからなのだが、シンセでゼロから作曲することとの違いはそれだけではない。一番はメロディーに対するアプローチで、ゼロから作っていく場合は自由に弾けばいいけど、サンプリングする場合は制約のあるなかでなんとかするということになる。しかし、結果としてはメロディーだけを取り出してもサンプリングビートの方が満足出来るものが出来上がるのだから不思議だ。

 

結果論でいえばサンプルを使った場合はもっぱら音を聴くことと選ぶ作業に集中しているので、自分の個性を出せる部分は選んだ結果というところにしか現れないことになるが、ゼロから鍵盤に向かうときは、もっと漠然とした状態の中を手探りで始めるので、完成度を突き詰める手前で力尽きてしまうということはあると思った。(全ては選択にすぎないという言葉を何かの芸術関係の本で読んだことがある。)

 

次にサウンド面について。サンプリングした場合、たしかにお金を払ってサウンドを使わせもらうことで、お客さんに受ける曲、斬新な曲等を作ることが可能になるのだが、別の問題としてオールドスクール期に発見されたブレイクビーツという方法を発展させていけばそれでいいのかという、ヒップホップをフォローしてきた世代ゆえの課題がある。

 

そして、その課題に対しての答えの一つにTR-808(ヤオヤ)リバイバルがあると思うが、方法論としてはアフリカバムバータが「プラネット・ロック」でやっていたことの延長線上にあり、課題に対しての答えになっているかについて疑問符が残るとはいえ、いいとこ突いてくるなとは思った(クランクからの流れもあるのかも)。ビートメイクのフォーマットの更新とは、ビートメイカーにとっての課題であるが、ブレイクビーツという方法論を発展させる方向がいままでの本流だったことに対し、方法論を発展ではなく転用した例はあまりない。

 

そんな訳で、ビートメイクに関しての自分の見解は、Vapor On Curryの音源で結果を発表していきたい。ビートメイクがいわゆる打ち込み、EDM・ポップ・R&Bの範疇に収まってしまうのは少しさみしいと思うからだ。

 

しかし、ここまで書いてみてなんだが、こうして自分の考えを整理してみると、自分のビートメイクについてのこだわりが緩くなっていくことに気が付く。かといって、自分はあっさりとポップなことが出来る人ではないと思うが。

 

f:id:nami_to_kami:20190530074000j:plain 連載 rotten apple dwellers は必読

 
 
 
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2019年7月13日、地元長野県ではなんと8年振り?となるライブ出演が決定!

 

『shibata & asuna/MOON FACE BOYS  Release Party』

 7月13日(土)松本 Give me little more.(長野県松本市中央3-11-7)

出演:Vapor On Curry、MOON FACE BOYS、shibata & asuna

開場 5:30pm/開演 6:00pm

料金 2,000円(予約/当日とも)*ドリンク代別

予約:会場(give.melittlemore@gmail.com

 

詳細はコチラ→ (http://www.sweetdreamspress.com/2019/06/moon-face-boysshibata-asuna-shibata.html

 

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Vapor On Curry(ヴェイパー・オン・カリー)プロフィール:

:90年代よりヒップホップ、テクノからの影響を受けトラック制作を始め、並行してスラッシュ・パンク・バンドのsynchro9、ポスト・ロック、ポスト・ジャズ・グループの暮シノ手錠などでも主にベースプレイヤーとして活動し、ソロ転向後は長野の裏番的トラック・メーカーとして、チープでオールドスクールな電子ラウンジからグリッチ&ダビーでダウンテンポなトラック・メイキング、さらにはメロディアスでキャッチーな胸きゅん&甘酢サウンドで暗躍する「犀南のJay Dee」と呼ばれるローファイ・トラック・メーカーのVapor On Curry(カレーの湯気)。自身によるレーベルTHOUSAND TUNEも運営。また、長野のネオンホール月報での定期コラムや、松本のイベントnami to kamiでのコラムを不定期で執筆。aotoaoレーベルからリリースされた『casiotone compilation vol.3』においてヒットを飛ばし、2018年末には、これまでのリリース作品を独自にまとめたベスト盤ともいえる『Acceptance』をリリースした。

https://soundcloud.com/fourleafmusic/sa-1   (v.o.c - track for casiotone compilation vol.3)